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COLUMN

#09
新人文系デザイナー日記

こんにちは!今回のコラムは、TBSテレビ デザインセンター2年目新人・古畑が書かせていただきます。
私は、タイトルにデカデカ書かせていただいたとおり「文系」で、デザインとはおよそかけ離れた「政治学科」出身のデザイナーです。
自分でもまさか本当になれるとは思っていなかった「デザイナー」になってはや2年、ここまでの仕事を振り返って書かせていただきます。

デザイナーになるまでのお話

ちょっとだけ、私がデザイナーになるまでを話したいと思います。
私は大学時代、政治学を学ぶ傍ら(傍らというか、実際は学生生活の時間のほとんどを、)所属していたサークルのイベント演出や広報に使う映像の制作に費やしていました。
高校までにも絵を習ったことも、もちろん映像ソフトの使い方を習ったこともなかったので、すべて独学でしたが、4年間で50個以上の映像を作り、その楽しさにどんどん没入していきました。

学生時代の映像制作風景

そして迎えた就活。自己分析をすればするほど、やりたい仕事は「デザイナー」でした。 しかし、求人を調べていると、デザイナーの募集要件にはほぼ確実に「美術大学、専門大学で学んだ人」という文言がありました。
そもそも門前払いか、、、と落胆していたときに見つけたのが、TBSテレビのデザインセンターの求人でした。何度応募要項を読み返しても、例の一言が書いていない!
当時は割と本気で、「書き忘れちゃったのかな?」と思っていましたが、「書いてないから送ってもいいか!」と、ポートフォリオとESを送ってみました。

そして、(もちろん書き忘れたわけではなくしっかり面接など進ませてもらい、実技試験で面食らったりしながらも、)あっという間に内定が決まり、19年春に入社。研修を経て9月に無事、デザインセンターに配属され、憧れの「デザイナー」になりました。

ビビる文系、迫る大仕事

配属された「デザインセンター」。当たり前ですが、同期も先輩方も、ほとんどが「美大」もしくは「建築学科」ときどき「理系」という出身の方々で、文系は自分だけでした。
もちろん自分は、入った時点で美大出身の方みたいに絵もかけないし、建築の方みたいに図面もかけないし、理系の方みたいに数字やメカに強くてCGソフトが触れるわけでもないわけで、完全にビビっていました。

しかし、絶賛ビビり中の自分は気づけばデザインセンターのブランドチームに合流し、「リブランドに伴う」、社内ポータルサイトと企業サイトの全面リニューアル、の「webデザイン」の大仕事を任せられました。
・・・リブランドに伴う???
・・・webデザイン???
自分が配属された時点(新ロゴとVIのリリースのおよそ半年前)で、すでに長い時間をかけて完成していたロゴやVIをしっかり落とし込んで、作ったことのないwebのデザインを作る。半年で。ええ?本当に??

追いつけ!切り拓け!いいグレーを探して

さて、任されたからにはやるしかない。
まずは、ブランドの根幹の考え方と、そこからブランドデザインを構成する要素が作られた過程、そしてどう実際のかたちに落とし込まれてきたのか、を追いかけることが必要でした。
共有されたドライブには、2年以上を費やして蓄積されてきた膨大な数の議事録やまとめ資料、ボツ案を含めた大量のデザインラフなどがありました。

膨大な資料の一部

新ロゴ、23.4°のライン、カラー、フォント、レイアウトの考え方、、ブランドをデザインで体現できるように固められた要素は多岐に渡り、全体を把握して整理することは至難の業でした。
しかし、知れば知るほど、一つ一つの要素の裏には丁寧な議論があり、新しい理念やブランドプロミスを体現するには?ということを突き詰めた結果が緻密に積み重なって、ブランドデザインの基礎ができていることがわかりました。(その内容は本サイトのトップページをご覧ください!)

社員自らがTBSの一員として新しい理念やプロミスを誰よりも深く理解し、それを「デザイン」に可視化していく作業を丁寧にやってきた過程と結果を前に、手前味噌にはなってしまいますが、自分は感動さえ覚えていました。
しかし、同時にその一翼を担うデザインを自分がやるプレッシャーもとんでもなく膨れ上がりました。

今回自分に割り振られたのは、webサイトのデザイン。印刷物などはそこまでですでに形になっているものが一定数ありましたが、webサイト上でのブランドデザインの表現は、ほぼ前例がない状態でした。
自分が合流した時点では、ブランドデザインの根幹はできていても、実際にいろいろなものに落とし込む際にどう発展させるか、どこまでは変えてよい要素なのか、そういうものを育てている最中だったのです。

まだまだ体に染み付いていないブランドデザインの空気感×不慣れなwebデザイン。ブランドデザインの過去作を見て、先輩に聞いて、何時間もいろいろなwebサイトを回って参考資料を集めて、「webデザイン基本のキ♪」みたいな本も記事も読みまくったところで、一つの壁にぶち当たりました。。
「いまあるカラーパレットだけでは、きれいなwebサイトが作れない!」
かいつまんで言えば、その時点で、TBSブルーを中心に構成されていたカラーパレットにはなかった、「いいグレー」が必要でした。TBSブルーを邪魔しない、サブカラーとも調和し、目に心地よい、ちょうどいいグレーを徹底的に考えました。そして奮闘の結果、制作した資料がこちら。

この資料を恐る恐る先輩に見せてみると、なんと、「すごいリサーチ力!」「このグレーならまたデザインの幅が広がる!」と褒められました。デザイナーになって初めて、「貢献」を感じた瞬間でした。

「文系」だからこそ、「自分」だからこそ

結果的に、「いいグレー」を使いながら、2つのサイトのデザインを完成させることができ、このグレーの色味は、いまでもいろいろなブランドデザインに使われています。(もちろん、このサイトにも!)

企業サイトのヘッダー付近のスクリーンショットだけでグレーが3種類。

最初こそ「美大ばっかり、、、」と尻込みしていましたが、こういった仕事を通して、いまではそんなこと関係ないな、と思うようになりました。
自分は今でも絵はかけませんが、その代わり、「膨大な情報を整理した資料」や、「綿密に練った言葉」を武器に、日々いろいろな方とコミュニケーションをとり、デザインを作っています。

「ブランドデザイン」という領域においては、「ブランドデザイン」はこうだ!という、いまのデザインチームのみんなが共有するちょっとふんわりした感覚までも、属人的にならずにしっかり残していくことが必要だと思います。その点で、自分の「膨大な情報」をまとめて「言語化」できる能力は、「使える」のでは?!と最近は思っています。
この武器は、文系でやってきたからということも少しは関係しているとしても、どっちかというと出身なんて関係ない、「自分だけの武器」だと思っています。そして、この武器を使っていいんだ!これが武器なんだ!と思えるようになったのは、周りの先輩方とデザインセンターの多様性を認めて尊重してくれる風土があったからこそだったと思っています。

長くなってしまいましたが、これを読んでくださった方には、これからTBSのブランドデザインを目にしたときに、その向こうにある膨大な議論の積み重ねを、ビビりながら取り組んだ新人デザイナーの奮闘を、思い出していただければ幸いです。

COLUMN ARCHIVE



#01
新ロゴができるまで

#02
TBSブルーができるまで

#03
タイププロジェクトさんとオリジナルフォント開発

#04
写真家・濱田英明さんにお願いしました

#05
TBSロゴアニメーション制作で考えたこと

#06
新しい展開がぞくぞくと!

#07
リブランディングメンバーをご紹介します!

#08
TBSの志を包むものを考える

#09
新人文系デザイナー日記

#10
時をしるすもの

#11
社内リノベーション

#12
SDGsウィークがはじまります!

#13
TBSNEWSとブランドデザインの密接な関係

#14
TBSグループは音のブランディングを始めました