TBSグループは、地上波放送・ラジオ放送・BS放送・配信・イベント…など多岐に渡る事業を手掛けておりますが、それらのブランドロゴは今まで別々のデザインとして展開していました。それを1つのTBSブランドとして見せるため、オリジナルフォント 「TBS Sans TP」を開発しました。
数あるデザイン・ロゴ制作において、誰が担当してもオリジナルフォントを使うだけで簡単に「TBSブランド」を表現できるようにしたかったのです。
新しいTBSロゴデザインの由来は、「Futura(ラテン語で”未来”)」にあります。
それまでも「From TBS」「TBS NEWS」など、TBSではFuturaをベースにしたロゴタイプを使用しておりました。
また、新しく制定したブランドプロミス「最高の”時”で、
そして、このTBSロゴの仲間となるようなオリジナルフォントの開発が始まりました。
まずは、Futuraの特徴である幾何学的なデザインをヒントに、正円や長方形といった要素からアルファベットを試作しました。
しかし、このように幾何学的にデザインしたフォントでは「O」や「W」といった文字の横幅が広く、様々なグループ会社やサービス名を表記すると、見え方がダイナミックに変化します。
そこで、等幅に近く可読性も高いDINのデザインをヒントに字幅をなるべく揃えるように調整していきました。
まずは、「O」や「W」などを中心に文字幅のバラ付きを少しずつ抑えていきました。
最後まで試行錯誤したのは小文字の「s」です。TBSというロゴタイプそのものにも大文字の「S」は含まれておりますが、これは正円の組み合わせがベースとなった幾何学的な構成にしております。もちろん「未来」を感じるデザインを生かすためです。
しかし、小文字の「s」を同じようにデザインすると横幅がどうしても狭くなってしまい、他の小文字との並びが悪くなってしまうのです。
結果、小文字の「s」は字幅を揃えることをベースに制作し、大文字の「S」との差を抑えるよう調整していきました。
このように、新しいTBSロゴの仲間となるオリジナルフォントの原型が完成しました。
さて、TBSのデザインチームでようやく作り上げたフォントのデザインですが、いざこのまま文字を打ってみても決して美しい文字には見えず、また文字間などもバラバラで全く使い物になりませんでした。私たちがデザインしたのは「文字」ではなく単なる「図形」だったのです。
そこで、「AXIS Font」をはじめ様々なフォントを開発しているタイププロジェクトさんにフォントとして改めてデザインしてもらいました。あらゆる文字の並びを視野にいれ、人間の錯視や、デザインとしての一貫性などを考慮し、まさに職人技とも言える細かな調整を行った新たなデザインとなりました。
「TBS Sans TPの原型としていただいた文字を最初に組んだときに、とても親しみやすく魅力的だったことを覚えています。このデザインをもとにフォントとして整えていく過程で重要視したのは、その個性を消さないということです。TBSのデザインチーム様とコミュニケーションを取りながら、慎重に進めることができましたので、最初に受けた印象を活かしながら、和文との相性もよい欧文フォントを制作することができました。」(タイププロジェクト 欧文担当デザイナー)
このようにロゴタイプの文字としての使いやすさなど、何度も検証を繰り返し、最終的な欧文デザインが完成しました。
和?部分はタイププロジェクトさんの「AXISフィットフォント」から、欧文に近い字幅、太さを採用しました。和文としてはやや横幅が狭いため、固くなりすぎず親しみやすい印象にすることができました。また、幅広いサービスをカバーするため、「Extra Light」から「Bold」まで合計6ウェイトのフォントファミリーとなりました。
瞬間的な訴求が求められるテレビ放送などでは「Bold」をメインに使用し、印刷物など情報量の多いものに関しては「Light」「Medium」が活躍しております。
実際に「フォント」として納品された時、早速自分たちで様々な文章やロゴタイプを打ってみました。あらゆる文字の並びでも違和感なく表示され、太さも6段階で変更できる。きちんとフォントとして機能していることを実感できた時の私たちの興奮は忘れることはありません。
新しいTBSロゴが運用されるとともに、様々な局面でオリジナルフォントを使用しております。会社名、サービス名などのロゴタイプはもちろん、企業パンフレットや経営資料、番組宣伝や時計テロップなど想定以上に細かいところにも出番があります。
というのも、ブランドと顧客との様々な接点のほとんどにフォントが存在しており、多くの部署やデザイナーが関与している中でトンマナを合わせるのは簡単ではありません。
そんな中、「これを使っておけばTBSらしくなる」と頼れるフォントがあるということでブランドの見え方を効果的に統一できているのだと思います。
フォントの開発は決して一筋縄ではいきませんでした。
思い通りのデザインと機能性を兼ね揃えるまで、社内デザインチームの仲間やタイププロジェクトさんと何度も何度も試行錯誤いたしましたが、このようにオリジナルフォントによってTBSブランドを効率的に表現できるようになったので、改めて開発して良かったと感じでおります。
(TBS デザインセンター 團野慎太郎)