TBS GXの発電所ストーリー

TBS GXの発電所ストーリー

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「#感動発電」の現場へ
~牛と未来を育む畜産のプロフェッショナル・村形虹太朗さんの挑戦

(株)アグロエコロジー取締役 村形虹太朗さん
[(株)アグロエコロジー取締役 村形虹太朗さん(30)。牛部門を統括する]

1. ソーラーパネルは「牛の日傘」。矢吹町の牧草地から始まる「#感動発電」の挑戦

7月のある雨上がりの早朝。福島県矢吹町にある牧草地に、近くの牛舎から妊娠中の雌牛2頭が運ばれてきました。出産を迎えるまでの期間、広い土地で自由に草を食べ、伸び伸びと走り回って過ごします。TBS GXが2026年2月に取得したこの場所は、ソーラーパネルの下で農業や畜産を行う営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)の現場です。ここでは牛のストレスを軽減し、健康を第一に考える「アニマルウェルフェア(動物福祉)」が実践されているのです。

ソーラーパネルの下の牧草地で過ごす牛たち

放牧された牛たちをどっしりと落ち着いたまなざしで見守っているのは、営農を担う(株)アグロエコロジーの村形虹太朗むらかた こうたろうさん。30歳という若さで取締役を務め、牛部門を統括しています。

「ソーラーパネルは、夏の暑さに弱い牛たちにとって最高の日傘になるんです。牛が熱中症などで死んでしまうのを防ぐ、大切な役割を果たしてくれています」と村形さんは語ります。

このパネルで創出された再生可能エネルギーは、横浜市にあるTBSグループの緑山スタジオへ送られ、日々のドラマ制作などの電力として使用されています。矢吹町の牧草地は、TBSのコンテンツ制作における脱炭素の取り組み「#感動発電」に向けた挑戦の舞台。そしてその現場を、村形さんの技術と情熱が力強く支えています。

放牧された牛たちを見守る村形虹太朗さん

2. 15歳で渡豪、アメリカでは1万2,000頭を管理。海外で培ったスケールと専門性

アグロエコロジーで牛に関する研究開発を一手に引き受ける村形さんは、異色の経歴の持ち主です。

神奈川県川崎市で育ち、15歳の時「自然や動物と関わる仕事がしたい」と畜産の道を志し、単身オーストラリアへ渡りました。現地の農家で2年間ファームステイをしながら高校を卒業すると、帰国後は北海道の農業専門学校に通いながら数々の農場で実践を積みます。その後、「スマート畜産」の実現を目指し、獣医学や農学の分野で世界トップクラスのカリフォルニア大学デービス校の農畜トレーニングプログラムに参加。

「7つの学問を学びました。畜産学や農学はもちろん、獣医学、環境資源学、数学、物理学などです。同時に、2つの農場を管理するファームマネージャーも務めました。管理していた農場の総面積は3,000ヘクタール、牛はトータルで1万2,000頭に及びましたね。」

村形さんが管理していたカリフォルニア州の農場
[管理していたカリフォルニア州の農場(村形さん撮影)。広大な農場間をプライベートジェットで飛び回り、バギーに乗って牛を追った]

3年間にわたる海外での実務経験を経て帰国し、スカウトを受けてアグロエコロジーに入社。人工授精や受精卵移植など約40の専門資格と、海外で培った幅広い知見を注ぎ込み、畜産のプロフェッショナルとして日本の現場でアニマルウェルフェアを体現しているのです。

アメリカの農場で働いていたころの村形さん
[アメリカの農場で働いていたころの一枚]

3. 「牛の幸せ」がビジネスと土地を再生する。アニマルウェルフェアの真価

アニマルウェルフェアの実践は、単に動物に優しくすることだけではありません。村形さんはそこには科学的な根拠と、数々のメリットが存在すると話します。

「放牧によって牛が自然な状態に戻り、ホルモンバランスの正常化やストレス軽減に寄与します。足腰が鍛えられることで受胎率が向上し、分娩事故のリスクも軽減するんです。アメリカの研究では、放牧を行うことで牛舎内のみの飼育に比べて分娩成功率が25%向上するというデータもあります。」

生まれる子牛が増えることは、ビジネスにおける売上向上にも直結します。さらに、その効果は土地にも及びます。ソーラーシェアリングの建設地は耕作放棄地であることが多いですが、牛が歩き回ることで土が自然に耕され、糞尿によって窒素などの栄養が供給され、痩せた土地が豊かに再生されていくのです。

福島県矢吹町でパネル周辺の牧草地を自由に歩き回る牛たち
[福島県矢吹町でパネル周辺の牧草地を自由に歩き回る牛たち]

アメリカの現場を知る村形さんは、アニマルウェルフェアを常に「国際基準」で捉えています。

「アメリカでは牛を不必要に束縛するという形を取ってはいけませんし、放牧できる時期に放牧しないと罰金が科されるほど徹底されています。日本と国際基準には大きな違いがありますが、うちの会社では妥協せず、世界基準の環境を目指していきます。」

そう語る村形さんの国際基準へのこだわりは、放牧という環境づくりだけに留まりません。牛たちの健康を支える飼料に対しても、常識を破る研究を行っていました。

4. 廃棄おからを10か月常温保存!独自技術でコスト削減と地域循環型農業を実現

村形さんがまず着目したのは、牛たちの日々の食の安全性でした。

「輸入飼料は価格が高い上に、防カビ剤など悪いものも含まれています。自分は畜産栄養学を学んだので、牛に必要な栄養はわかっています。それを達成するために、地域で受け取れる資源から飼料化できるものを考えました。」

白羽の矢が立ったのは「おから」でした。

「栄養価は非常に高いのですが、ものすごく足が速い。1日、2日で腐ってしまうんです。」

会社の研究施設は電気を使えず、冷蔵設備もありません。しかし、その制約が村形さんの研究者としての知恵と工夫を引き出します。行き着いたのは、乳酸菌で発酵させておからを長期保存可能にする技術。これによって、常温で10か月の保存が可能となったのです。

「今では主力の飼料で、無いと経営が崩壊します(笑)。おからは豆腐工場で買取していますが、廃棄物になるものだから0円です。それを最高の飼料として受け取れるんです。」

村形さんが開発したおから発酵の自家製飼料を食べる牛たち
[村形さんが開発したおから発酵の自家製飼料を食べる牛たち]

村形さんの研究はさらに続きます。次に取り組んだのは、本来廃棄される牛乳を常温管理する技術開発でした。乳酸菌を使ってヨーグルト状にすることで、夏場でも常温で1か月保存可能にする技術を確立、特許も出願中です。

「子牛用の粉ミルクはとても高価で経営を圧迫していたので、使いたくなかったんです。地域の酪農家さんからは人間が飲めない出荷不能な生乳も出るのですが、勝手に捨てると不法投棄になってしまう。それを安く買い取って活用しています。」

村形さんが開発した哺乳用ミルクを飲んで育つ子牛
[村形さんが開発した哺乳用ミルクを飲んで育つ子牛]

柔軟な発想から生まれた独自技術により、飼料コストは約70%も削減。地域の未利用資源を活かして高品質な牛を育てるモデルを確立し、最先端の地域循環型農業を実践しているのです。

5. 探究心のルーツ―――学問書に囲まれた幼少期と、自力で切り拓く研究者精神

このような高い専門性と、次々と常識を超えていく開発力は、一体どこで培われたのでしょうか。そのルーツを辿ると、村形さんの幼少期の環境にたどり着きます。村形さんは、両親ともに製薬関係の仕事をする家庭に育ちました。

「子供のころは家の中は学問書だらけでした。好きな絵本は『体の組織』という本でしたね(笑)。」

幼少期に両親からパソコンを与えられ、「わからないことは何でも自力でインターネットや本で調べ、解決する」というのが家庭の方針だったといいます。専門書を読むために必要な英語も、プログラミングの知識も、独学で習得しました。

こうした研究者肌の村形さんですが、その根底にずっとあるのは、幼い頃から抱き続ける自然や動物への深い愛情です。多忙な現在も、休日になると牛たちのいる牛舎へと足を運びます。

休日に子牛と過ごす村形さん
[休日の村形さん。子牛と過ごすひととき]

「子牛と触れ合っていたら、自分にとってはそれが一番の休暇ですね。仕事の日はやらなくてはいけない業務があるので、休日は自由に牛舎の世話をして、メリハリをつけています。」

生まれてすぐから世話をしている子牛と村形さん
[生まれてすぐから世話をしている子牛。村形さんに心を許している]

6. AIの機能を拡張。繁殖管理で牛の受胎率が向上

村形さんが足繁く訪れる福島県郡山市の牛舎では、今、AIを活用した受胎率向上の研究が進んでいます。数年前から導入されているのは、牛の発情の兆候を感知するシステムです。これにより、人工授精の適切なタイミングを判断できる体制が整ってきました。

さらに村形さんは複数のAIを連携させ、自らプログラミングして機能を拡張。現場でより有効に使えるシステムへと進化させました。

その成果は、受胎率の数字となって表れています。初回の授精による受胎率は、2022年度の38%から年々上昇し、AIを本格導入した2025年度には64%、2026年度は71%(※取材時点)にまで達しました。さらに2025年度の実績では、2回目までの授精で75%、3回目まででは約85%という高い受胎率を記録しました。AIによる監視と現場のノウハウが融合し、繁殖管理の精度向上と省力化が進んでいます。

取材の前日に生まれたばかりの子牛と母牛
[取材の前日に生まれたばかりの子牛と母牛]

7. ソーラーパネルで自律充電。ロボット×再エネ×アニマルウェルフェアが描く未来

その先にある未来のフェーズとして、村形さんが見据えているのは、自律型の人型ロボットがソーラーパネルの下で活躍する姿です。

「フェンスの見回りや草刈り、さらには牛たちが安全に過ごしているかをロボットのカメラ越しにリアルタイムで確認できる環境を整えていきたいですね。5〜6年後には、民間の現場で実用的に扱えるロボットが登場してくると見ています。」

人型ロボットがソーラーパネルの下で働く未来のイメージ
[人型ロボットがソーラーパネルの下で働く未来(村形さん作成の画像)。ロボットはパネルから自分でエネルギーを充電して働き続ける]

ロボットが活躍する未来では、太陽光発電の存在が重要な役割を果たします。

「ソーラーパネルがあることで、太陽から直接エネルギーを得ることができます。現場に充電ステーションを設ければ、ロボットが自分で充電して、満タンになったらまた働きに行く、という半永久的に動き続けるシステムが可能になると考えています。」

現在は、パネルによる電波阻害という技術的課題の克服に取り組んでいますが、これも最先端技術との融合によってクリアできるめどが立ちつつあります。

ロボット×再エネ×アニマルウェルフェア。誰も見たことのない次世代の営農モデルは、すぐそこまで手繰り寄せられているのです。

8. どこまでも「牛ファースト」で自然本来の姿へ。

前例のない未来を切り拓く村形さん。しかし、どれほど技術が進歩しても、その根底には揺るぎない軸があります。牛と向き合う仕事への思いを聞いてみました。

「『牛ファースト』の考え方でやっています。牛が第一優先です。人間の都合で牛を変えたくないんですよ。体を大きくしたりとか、本来の形ではないですよね。自然本来の形の環境に戻す。そういう目標を持ってやっています。」

牛たちの健やかな暮らしを第一に考える牛ファーストの精神と、太陽の恵み、そして最先端のテクノロジー。これらが揃った矢吹町の牧草地には、単に再エネを生み出すだけではない、人と動物と環境が調和する未来が広がっています。

ドラマ制作の電力を育む太陽の下で、今日も牛たちに寄り添う村形さん。その熱意と挑戦の現場は、「#感動発電」の確かな原動力となっているのです。

村形さんを囲んで、アグロエコロジー、グリーンシステムコーポレーション、TBS GX、UPDATERのメンバー
[村形さんを囲んで。アグロエコロジーと親会社のグリーンシステムコーポレーション、TBSGXと、参画するUPDATERのメンバー]

(※年齢や肩書などの情報は、2026年7月の取材当時のものです)