このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。
2006年1月16日(月)開催 / 第483回番組審議会より
年末年始編成について〜「里見八犬伝」を中心に〜
審議事項
年末年始編成について〜「里見八犬伝」を中心に〜
委員長 | 生田正輝 |
副委員長 | 沼田早苗 |
委員 | 池田守男 音 好宏 金澤正輝 篠塚英子 月尾嘉男 寺島実郎 ねじめ正一 山藤章二 横澤 彪 |
井上社長(TBSテレビ社長)
若林副社長(TBSテレビ副社長)
財津専務
城所取締役(TBSテレビ専務)
石原編成制作本部長・報道本部長(TBSテレビ常務)
石川編成制作副本部長(TBSテレビ取締役編成局長)
金平報道副本部長(TBSテレビ報道局長)
成子編成考査局長
TBSテレビ田代制作局長
TBSテレビ石川スポーツ局長
TBSテレビ制作1部鈴木プロデューサー
山中番審事務局長
◇滝沢馬琴著「南総里見八犬伝」−
戦国初頭の関八州(関東地方)を舞台に、妖女の霊にとりつかれた悲運の姫君と、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の文字が浮きでる八つの霊玉を持つ八人の若き武士たちが活躍する、江戸時代後期の超人気長編小説。
映画版、人形劇と様々な形で映像化されてきた「里見八犬伝」だが、今回は原作にできるだけ忠実に、テレビドラマとして実写で映像化。
脚本は「不機嫌なジーン」で向田邦子賞を受賞した大森美香、映画「いま、会いにゆきます」をヒットさせた土井裕泰の演出、アカデミー賞受賞のワダエミによる衣装デザイン、と制作スタッフも強力な布陣。
制作期間も従来のテレビドラマの発想を大きく超える5ヶ月間、放送時間も5時間と前代未聞の規模の大きなドラマ制作となった。
「生きるために闘え!」というシンプルな命題が消え去った時代に、「勧善懲悪」を基本骨格に「因果応報」を織りまぜたエンタテインメントの王道をめざす。
◇「八犬伝」のような古典の長編を、こうした形で楽しませてもらえるのは有り難い。ただ、「領民」「安逸」など、会話の中の文語がこなれていなかった。また、玉梓と伏姫の対立と怨念の構図が曖昧で、活劇に止まったのは残念。
◇「八犬伝」というと、私たちの世代はNHKでの辻村ジュサブローの人形劇。
「昔とどう違うのか」という親の世代、滝沢秀明さんのファンの世代を集めたことが高視聴率の一因だろう。若手の稚拙な演技をベテランが補っていた。CGの使用は戦略的な意味もあるだろうが、余り多用するとそちらにばかり目が行ってしまう。
◇ワダエミの衣装なのでどうしても「HERO」に重なるし、「ザ・ラストサムライ」とイメージともだぶる。ワダエミのデザインはじめスタッフが素晴らしく、歌舞伎の様に楽しめば面白味が出ると思った。脚本の大森美香さんもいい。このような若い才能を使って、現代的で魅力的なドラマを作ってほしい。
◇「八犬伝」の原作は仏教・儒教の融合だが、そこまで踏み込むのは難しいので、玉梓の怨念を前面に据えたのだろう。それはそれで分かりやすいのだが、彼の宇宙観に挑戦する姿勢があってもよかった。
◇対象が若者なのか中高年なのか良く判らない。アクションなのか、感動なのか、どちらに力点を置くかでも、訴える内容が徹底しなかった。
◇映像・リズム感・CGを含めて、「HERO」「LOVERS」的な新しいタイプの時代劇。勧善懲悪・因果応報を前面に押し出さなかったのが良かった。「八犬伝」は謎を解きながら8人が集っていくのがプロットだから、連続ドラマの方が相応しかったのではないか。
◇馬琴の凄さは対立の構図と恨みだが、そこが足りない。もう少し馬琴を意識しても良かった。原作の「悲しさ」の要素を取り入れてほしかった。
◇長大な原作を、よくまとめたと思う。能書きが余り無いのがTBSらしくなくて良い。ワダエミさんの衣装が、敵味方ハッキリわかっていい。武田鉄矢が敵役で、金八先生とは違う味わいを出すなど、演技陣も良かった。
◇伝奇物語の良さとして、リアリティの束縛から逃れ、全編映像に耽溺できる。中でも芳流閣での現八と信乃の勝負が美しく、中国ロケのスケール感も素晴らしかった。
◇全体の雰囲気が黒澤明「影武者」を彷彿とさせ、テレビでもそれが出来る時代になったかと思った。シルエットや透過光、空撮の時間帯など、光を意識した立体的なカメラワークだった。
◇最近のドラマは「時代劇ならいいが、現代物になると駄目」といわれる。やはり、荒唐無稽を楽しむということだろうか。「八犬伝」に関するイメージがある程度あるものだから、若者がどう思っているのか気になった。
◇青少年とドラッグの問題を真正面から取上げた「金八先生スペシャル」。是非この姿勢を貫いてほしい。「日本昔ばなし」は安心して見られるが、「BLOOD+」の描写は鮮烈すぎないか。
◇1月からの新ドラマを含めて、難しいテーマであったり、シリアスなものをガッチリと作っている印象だ。
◇昨年が「戦後60年」とすれば、今年こそ実は日本にとって21世紀の始まりではないか。そうしたメッセージを発信するような番組に出逢わなかったのは残念。
◇「筋肉バトル」「KUNOICHI」など、スポーツ番組で新しい分野を開拓したパワーで、例えば経済をエンターテインメントの視点から切るなどはどうだろうか。国民の関心を喚起させるのもメディアの役割だ。
◇少しスポーツ番組に傾斜しすぎでは。報道系番組で、ひねった「考えるヒント」になる番組を。
◇関口宏の「歴史は繰り返す」は、刺客・独裁者などのキーワードで、過去から現在を切っていこうというTBSらしいスタンスで、ピリリとスパイスが効いていた。しかし、小泉圧勝に果たしたテレビの役割を考えると、時期遅れの罪滅ぼしという感じもする。
◇従来の地上派が、人間のつながり・喜怒哀楽を表現していたのに比べ、高画質の液晶テレビの時代は、風景・動植物。地球と自然環境から伝わる感動を、皆が求めているのではないか。
番組審議会事務局