番組審議会議事録

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番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2005年5月16日(月)開催 / 第477回番組審議会より
金曜ドラマ「タイガー&ドラゴン」第4回「権助提灯の回」
21時30分〜22時54分(野球中継延長のため時間変更)

議題

井上社長・財津専務より、編成制作本部担当部長によるホームページ盗用問題について
 事実関係の概要が説明された。
審議事項
 金曜ドラマ「タイガー&ドラゴン」第4回「権助提灯の回」
 5月6日(金)21時30分〜22時54分放送(野球中継延長のため時間変更)
 その他

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長 沼田早苗 
委員音 好宏 金澤正輝 篠塚英子 寺島実郎 ねじめ正一 横澤彪 山藤章二 

局側出席者

 井上社長(TBSテレビ社長)

 若林副社長(TBSテレビ副社長)

 財津専務取締役

 城所取締役(TBSテレビ専務)

 石原編成制作本部長・報道本部長(TBSテレビ常務)

 石川編成制作副本部長(TBSテレビ取締役編成局長)

 金平報道副本部長(TBSテレビ報道局長)

 成子編成考査局長

 TBSテレビ田代制作局長

 TBSテレビ制作局制作一部磯山プロデューサー

 山中番審事務局長

番組内容について

◇本年1月9日にスペシャルドラマとして放送され、落語の演目『三枚起請』と、実際の物語がリンクする、斬新な構成の脚本・演出が大好評を博した「タイガー&ドラゴン」の連続ドラマ版。スペシャルに引き続き、主演に長瀬智也と岡田准一、脚本・宮藤官九郎、演出・金子文紀を配し、一話簡潔形式で、林屋亭どん兵衛(西田敏行)に弟子入りしたヤクザ虎児こと小虎(長瀬智也)を中心に、伊東美咲らバラエティーに富んだレギュラー陣が古典落語を現代版に鮮やかに料理する。審議対象回では、「権助提灯」をもとに、初恋の人小春(森下愛子)を巡るどん兵衛と流星会組長(笑福亭鶴瓶)の切ない思いを描く。

◇F1ばかりではなく、幅広い世代に受け入れらているのは嬉しい。これを契機として、日本の伝統文化の豊かさに視聴者が目を向けてくれればと思う。ただ、主人公がヤクザという設定は、長瀬智也さんが格好良過ぎるだけに、土下座シーンなど、青少年への影響に意を用いて欲しい。車中の会話も聴き取り難い処があり、関西弁も関西出身者からすると不快な箇所がある。日本の多様な喋り方を大切にして欲しい。

◇瞬間ネタ全盛のバラエティーに逆行して、落語にフォーカスすることで、味わいのある笑いを引き出し、テンポも速く大変成功している。長瀬・岡田さんの2人を、西田・鶴瓶・尾美としのりさんという、個性豊かなベテランが固めていて、本来なら幅広く視聴者にアピールできるのに、コアなクドカンファン中心にこじんまりまとまっている印象で残念。しかし積み重ねていくことである種の「トレンド」が出来て来る予感がして、今後を期待している。

◇「木更津キャッツアイ」以来の、躍動感とテンポの良さがいい。落語を「聞くもの」から「目で見るもの」にしたのは、若い人達には判り易いが、長瀬さんらの言葉が、とても乱暴。速いだけじゃなくて、もう少しソフトな語り口があってもいい。マクラからサゲまで通常20分。それを1時間である程度判らせるのは結構きついのでは。落語の持つ言葉の面白さが余り伝わらなかったのが残念。

◇1月のSP版の時は、心臓を掴まれた様で、クドカンの構成と脚本のセンスに、落語愛好者として御礼を言いたいほど感動した。しかし1時間枠になると、テンポが速すぎて、ファンでない人、高齢者にはついていけない。それと、演者全員大体押しの芸なので、間(ま)、メリハリがなく単調に映る。作り手の「ついてこれない奴はついてこないでいい」という気概は良いが、喩えていえば山頂から8合目あたりまで降りて来てくれれば、より見易くなるし、見てみようかなと思わせるのではないか。それから、エンドロールが斜体で速すぎる。あれだけの個性派を揃えているのだから、こちらも情報を知りたい。もう少し親切に読ませて貰いたい。

◇TBSらしくないのが良い。ただ、落語界を覗いた者とすると、師弟関係が滅茶苦茶。キーマンのおかみさんの役割が全然消えている。「前座が『芝浜』」と言うのもあり得ないし、浅草の匂いがもう一寸欲しい。落語は、自分の個性を殺して登場人物を表現する芸なのに、ドラマでは終始個性あるままの落語だから、至る処に細かな無理が発生して、シラケてしまう処がある。磯山プロデューサーの今後の仕事は、今のクドカンワールドを違う方向に壊していくこと。そこから突破口が生まれるのではないか。

◇大変「たくらみ」の多いドラマだと思う。それについて行けるか行けないかではっきり分かれる。落語から時代物に、そして現代へという構成が非常にスピード感があって、頭がどんどん切り変わっていく。抹香臭さ、説教臭がないのが良い。余りドラマを見る方ではないが、これは良いなと思った。

◇日本の温泉に浸りながら、非常に良質な落語を聞いたような印象。タイムスリップした世話物みたいなわくわく感と発見もある。無頼だが、格式・様式美にも理解を行き届かせるという、「暴れん坊将軍」から「ごくせん」に通底する日本的ドラマの伝統を踏まえている。しかし、大河ドラマで「義経」と「忠臣蔵」を繰り返し、判官贔屓的な義理人情を再生産することから一歩踏み出して、今抱える「圧倒的な時代性」を何か意識したドラマ作りが必要なのではないだろうか。

◇権助の提灯が現代ではカーナビになっているなど、全く違和感がなく、古典が大変身近に思えた。たしかに落語世界の上下の関係も突拍子もない感じだが、若者は漫画を見るように「半分は作りもの」ということを多分に意識していると思う。それが変に説教じみて「落語は面白いんだよ」と見せられると、逆に反発すると思う。若者が使う短い言葉と、年配の人との駆け引きで、若者なりのコミュニケーションが意外と素直に画面に出ていて、そんな処が入り易いなと思った。

◇テンポに必死になって追いかけるような気持ちだったが、大変面白い。落語と現実を重ね合わせる発想も素晴らしい。しかし、求める方が無理かも知れないが、親しんできた古典落語の洒脱味からは一寸遠い。


番組審議会事務局