番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2005年1月17日(月)開催 / 第473回番組審議会より
金堂復元!唐招提寺1200年目の真実
15時00分〜16時24分

議題

審議事項
 金堂復元!唐招提寺1200年目の真実
 その他

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 音 好宏 篠塚英子 寺島実郎 ねじめ正一 横澤彪 

局側出席者

 井上社長(TBSテレビ社長)

 若林副社長(TBSテレビ副社長)

 財津専務取締役・城所取締役(TBSテレビ専務)

 石原編成制作本部長・報道本部長(TBSテレビ常務)

 石川編成制作副本部長(TBSテレビ取締役編成局長)

 岡元報道副本部長(TBSテレビ報道局長)

 山中編成考査局長兼番審事務局長

 TBSテレビ報道局報道番組部西野制作三部吉田プロデューサー

番組内容について

◇TBSでは、2000年に始まった唐招提寺「平成の大改修」を10年プロジェクトとして取り組み、金堂解体・改修の全容を映像に記録するとともに、同寺所蔵の仏教美術展を各地で開催するなど、多彩な文化事業に取り組んでいる。
今回の番組は、いわば改修の折り返し点。年輪測定法による金堂の建立時期の特定、鑑真の弟子として金堂建立に尽くした謎のペルシャ人「安如宝」の軌跡を追う。圧巻は最新CG技術を駆使した創建当時の金堂再現。
1200年の時空を超えて、天平の謎に迫る知的エンタテインメントである。


◇8世紀に、安如宝という中央アジア出身の碧眼の僧が、鑑真と来日し、仏教に影響を与えたというのは、大きな意味を持つ。企画を深め、敢えてもう1本番組を作るとしたら、現代的意味において「ユーラシアの交流」が一番のキーワードではないか。単に教典・仏像の伝来という次元ではなく、文化そのものへの大きなインパクトを伝えることによって、単なる古文書解読的な解説から、もっと現代に引きつけたダイナミズムを描いても良かったのではないか。放送時間の制約もあったかも知れないが、そうした思想を「伝える構え」が欲しかった。

◇余り歴史は得意分野ではないが、金堂解体がきっかけになって、随分引きつけられて見た。見終わった後に、何故如宝があそこまで唐招提寺という存在をアピールしたかったのかとか、どろどろとした面とか、「あれも知りたい、これも知りたい」という思いがと出てきた。そうしたヒントにさせて頂いたという点で、この番組に確かにそういう力があったかなと感じた。

◇スケールが非常に大きな感じ。視聴率的にも、高齢者ばかりでなくF1、M2も捉えたというのは面白いし、成功したと思う。ただ、少し欲張り過ぎて、全体に散漫な印象になってしまった嫌いがある。光谷室長の年輪測定にこだわる科学者としてのまなざしを、もう少し克明に追って良かった。如宝というのはどんな人だったのかとか、欲を言えばもう少し人間臭くてよかったのではないか。

◇力作で、天平文化当時の政治・経済・社会情勢に想像を膨らませるヒントを貰い有難かった。鑑真・如宝から空海・最澄へ、いろいろな人間関係が密接にあったはずで、歴史的知識のない人に対しては、もう少し人間的に掘り下げていけば、幅広い層の興味をそそったのではないか。鑑真が「下野薬師寺に戒壇を設けた」ということにしても、奈良と栃木とどんな交流があったのだろう。想像性を非常に喚起させられた。

◇年輪、樹皮の測定で、建立時期が781年という結果が出たが、それが学界で報告・定着しているのかどうか。金堂は如宝が建てたという点にしても、どんな人脈で、どこから資金を調達したのかが全然判らなかった。最後に、明らかになったところと明らかでないところについてコメントがあったら良かった。今年は阪神淡路大震災から10年。平成の大改修の直接のきっかけが、95年の大地震の時の金堂柱の傷みであったことを少しでも触れれば、今後に繋がると思った。(註・制作側より「時間の関係で割愛せざるを得なかった」と説明あり)

◇制作サイドが、新しいCGでの表現に取り組もうとした熱意がよくわかる。ただ、材料を盛り込み過ぎて、時代背景の説明、技術的なテクニカルタームなど、一生懸命見ないと、見落とし、聞き漏らしてしまうところが多かったのは残念。ナビゲーターのはなさんが、「何となく行って、そこで歩いている」という使い方で曖昧だ。仏像が好きなのであれば、そこにぐっと入っていくようなコメントをする舞台回しがあるべきではなかったか。

◇上野の「唐招提寺展」を観たが、番組にはかなわない。「実物よりも番組の方が良かった」と思わせてくれた。

如宝を柱に肉づけした構成、CGの駆使、転用材を使っていることが判ったり、鴟尾までもが転用されていたのではという発見があって、ただ煌びやかなだけではなく堅実で、壮大なだけではなくて、凄く人間的な温もりが感じられて、大変良い仕上がりになっていたと思った。

如宝だけで番組が一本出来るのではないか。CGの後姿の前に廻って、顔を見てみたいと思った。

◇番組そのものは、良い番組なのに、事実発見への興味と、社会背景との関連・フィロソフィーが入り組んでしまった感が免れない。また映像も、いろいろな面から沢山撮られているので、まだまだいろんな番組が作れるのではないかと期待している。

TBSが、こういう文化活動に力を注ぐというのは非常に有意義。展覧会では実物の存在感に圧倒された。TBSの伝統として、文化活動に一層力を入れて頂きたい。

*尚、審議冒頭事務局より、昨年BPO「放送と青少年に関する委員会」が公表した「『血液型を扱う番組』に対する要望」を踏まえつつ、社内で論議・配慮を尽くした上で12月28日「ABOAB血液型性格診断のウソ・ホント 本当の自分&相性探し 来年こそは開運スペシャル!」を放送した経緯、及び放送後の視聴者の反応について審議会に説明、了承された。


番組審議会事務局