番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2004年6月21日(月)開催 / 第468回番組審議会より
6月6日(日)放送「報道特集」について

議題

報告事項
 訂正放送について
審議事項
 6月6日(日)放送「報道特集」について
 その他

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 音 好宏 篠塚英子 寺島実郎 ねじめ正一 山藤章二 横澤 彪 

局側出席者

 井上社長・若林常務取締役

 財津常務取締役・城所常務取締役

 石原取締役編成本部長・岡元報道局長・田代編成局長

 玉置編成考査局長・田澤番審事務局長

 西野プロデューサー

報告事項

◇冒頭井上社長より、株主総会後の役員昇格及び人事異動、10月1日発足するテレビ新会社の概要について説明があった。

◇事務局より、血液型性格診断の取り扱いに関する「放送と青少年に関する委員会」の要請(7月8日付)、これに対するTBSの回答(8月12日付)について報告があった。

◇冒頭井上社長より、5月19日(水)付発令の組織変更の概要と、社側の新たな出席者として石原取締役編成本部長の紹介があった。

◇事務局より、5月25日(日)放送の「ニュースの森」ローカル枠特集の内容に関して、訂正放送実施の報告があった。

番組内容について

◇6月6日(日)午後5時30分〜6時24分放送。
80年10月スタートした、TBS最長寿番組。CBSの「60ミニッツ」をモデルに、土曜夜10時という時間帯に、記者リポートを柱とした硬派の報道番組スタイルを確立した。82年4月日曜夕方6時に移行後も「アキノ暗殺」など数々のスクープを連発。2000年5月に日曜午後5時半に移行、去年10月、地道な検証報道などを相変わらず志向しながらも、"見やすさ""判りやすさ"をこれまでより前面に押し出した大幅なリニューアルを行った。現在田丸美寿々がキャスターを務めている。
ちなみに6日の放送内容は「長崎佐世保小六女児殺害事件」「布川事件再審」「万景峰号同乗記」。

◇今は事件の未成年の被疑者の顔写真が瞬時にネットを駆け巡る。犯罪そのものも、ネットという「情報環境の変化」が背後に横たわり、「覗き見文化」・匿名の犯罪が世論形成にさえ影響してしまう。ネット時代の報道のあり方の難しさを痛感した。
「落ちついたバランスのある番組」を志向しているようだが、意外なほど田丸キャスターが喋らない。淡々とプラットホームを提供するのに留めるのか。「60ミニッツ」をモデルにしてというなら、北朝鮮問題など、どうしてもそれなりの「価値判断」が求められる。その為には相当な準備と歴史観・世界的視野の構想力、バランス感覚が基盤にないと、今後報道番組は段々と作れなくなって行くのではあるまいか。

◇佐世保の事件は、発生後時間を経ていない段階での報道のあり方が気になった。カーテンを閉めての犯行など、独自取材によるディテールは判るが、とにかく作らなければという「慌しさ」が伝わって来た。「万景峰号」取材は、映像の力の強さというか、日本からの送金で暮らしている現地の人々を捉えることで、北朝鮮の「ほころび」を見せてくれた。

◇こういう番組は特定のコアなフアン層が支えているのだと思うが、リニューアルによって昔の「強烈さ」が無くなって、だいぶ柔らかめになった。「テレビの財産」として生き残って欲しい良質の番組だけに、改良を重ねていく姿勢は良いのだが、その代わり噛み付くものが非常に希薄になった。通して見て「結論を出さない」のが良い。それは逃げているのではなく「出し難いものは出さない」という姿勢が非常に良い。この手の番組で一番怖いのは「古臭い」と言われることだが、それは余り感じなかった。

◇良いも悪いも「ネタ次第」ではないか。6日放送分は、一膝乗り出してという程ではなかったが、20日の脱北者証言など、南北のプロパガンダ放送休戦ということ時宜に合った好企画だったと思う。田丸美寿々さんは、CXの安藤優子さんと並んで女性キャスターの双璧。現場に立って生き生きする安藤さんと、一寸お嬢さん風の田丸さん。ドライ過ぎず、ウエット過ぎず、程々のお色気がある。番組の見方としては、ネタ次第だから毎回、毎回の採点というのは付け難い。そこにおける「板前さん(キャスター)の好感度」というか、茶の間で見ている人間との相性において判定すれば、今のこの番組をとても気に入っている。

◇長崎の事件を冒頭に持って来たのはリニューアルによる「タイムリー性」「機動力」だが、掘り下げ不足も逆に見えてしまった。
「布川事件」再審は、報道に強いJNN各局という特色が出て、如何にも「報道特集」らしかった。リニューアルで明るくなったのは良かったが、従来の「骨太さ」とどう巧く組み合わせていくかが課題。「じっくり取材」と機動力がうまくマッチングした時、視聴者もより獲得できるのではないか。

◇日曜午後5時半スタートというのは、果たして「検証報道」をじっくり腰を据えて見られる時間だろうか。長崎の事件は発生から日が浅く、1時間という枠内でじっくり考えて貰うためには、最低取材に1ヶ月かけたテーマが欲しい。「布川事件」については、冤罪報道として引き続きフォローアップして欲しい。「万景峰号」の同乗取材は、初めての映像だから惹き付けられて見た。背後にある「入港禁止法」について掘り下げたコメントがあれば、問題の根深さが一層明らかになったと思う。

◇「客観報道」「検証報道」という立場から、今後とも調査・検証に報道番組全体のウエートを置いて欲しい。更に一歩進めて、「提言報道」と言うべき、意見・主張・提言が必要ではないか。長崎の事件にしても、子供の成長過程でコミニュティー全体が果たす役割が欠落している様に思われてならない。そうした点の「投げかけ」が欲しい。

◇すぐ帰れると思ったら20年も拘束され、「裁判官を信用出来なくなった」という当人の証言を聞くと、冤罪の怖さを痛感する。万景峰号についても、あの巨大な船影と反対のシュプレヒコールというイメージだったが、里帰りの映像を観て、政治とは別次元の「人の繋がり」も大事にしなければと思った。日曜夕方5時半というのは、若い人から年配の人まで意外と入って行き易い時間ではないか。

◇放送開始から24年も経っていることに驚いた。いつも感心して見ている。「テーマの選択」が一番大切。万景峰号にしても、あちらからは船が往来しているのに、何故こちらから行けないか。「国交がないからだ」といえばそれまでだが、そうした素朴な疑問を掘り下げていけば、様々な問題が見えてくるのではないか。


番組審議会事務局