番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2003年9月16日(火)開催 / 第459回番組審議会より
テレビ番組「世界陸上2003・パリ大会」
〜31日(日)

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 音 好宏 篠塚英子 ねじめ正一 山藤章二 横澤彪 

局側出席者

 井上社長・若林常務取締役

 財津常務取締役・城所常務取締役

 児玉常務取締役・岡元報道局長・田代編成局長

 田澤番審事務局長/編成考査局長

 石川TBSスポーツ制作本部長

 三角プロデューサー

番組内容について

◇TBSとして4回目の放送となる今回のパリ大会は、陸上ファンのみならず、一般の視聴者にも広く競技を楽しんでもらうべく制作した。スタッフは、パリに150名、本社200名、合わせて350名。国際映像に加えてTBS独自のユニカメラを9台、ENGカメラを3台配置、マラソンでは8台を追加して放送した。8月23日から9日間、放送時間は延べ60時間に及び、枠全体で11.9%、P帯で16.4%という、TBS制作の「世界陸上」としては過去最高の視聴率を記録した。
制作にあたっては「選手に対する敬意」を基本的精神に据え、生中継・ライブ感覚へのこだわり、選手に「キャッチコピー」を付けるなど、事前徹底取材による豊富な情報、織田・中井両キャスターの陸上へ寄せる愛情、日本人選手に偏しない番組作り、独自カメラを駆使したパリ映像の提供が成功の要因と分析している。

◇最近、スポーツに理解のない芸能人が単に「にぎやかし」で出演し、嬌声を上げるスポーツ番組が多い中、織田裕二・中井美穂両キャスターはとても良かったと思う。

逆に、もう少しクールダウンして欲しかったのは、中継を担当するスポーツアナウンサー。入念な「取材」と「表現」は違う。たっぷり取材しても、表現の時は相当刈り込まなければ。殆ど「在庫なし」のようにしゃべられると、かえって焦点がぼけ、「ノイズ」になってしまう。これは、スポーツアナの陥りやすい永遠のテーマかも知れない。

◇制約の多い競技場にカメラが入り込み、非常に身近なところで映像を見せて頂いた。スポーツとはこんなに美しいのか、まるで市川崑さんの「東京オリンピック」に匹敵するような躍動的な映像を拝見し、こういうものがもっと我々の周辺にあれば、陸上競技支持層の拡大につながるのではないかと思った。

◇織田裕二君が良かった。私も「もうすぐ」「このあと直ぐ」につられて4時半まで拝見したが、あんなに真面目に白々しいことを言うのは、役者じゃないと多分できない。その生理が非常によかったんじゃないか。

無論日本人の活躍が見たいのだが、世界のトップアスリートたちも見たい。その中継がおまけの様になってしまって、もっと堂々とやっても良いのではないか。

◇織田裕二さんをいいなと思ったのは、日本の選手が負けたときに、「もう次に行きましょう」。冷たい言い方じゃなく、一番心を痛めているのは選手たちなんだから、そのことについて、もう余り触れたくない、そういう潔さみたいなものが非常にあった。

一方、中井美穂さんは、織田さんの話をとって、それを膨らませたりフォローしないところが却ってよかった。頭、勘がいい。スポーツ番組というのは、勘のいい人がパッパッとつかんでくれている方が、見ている方は、非常に気持ちがいい。

ルールが改正になって、100メートルでスタートが大変遅れた時、織田さんは結構はっきり言っていた。ああいうところの役割を非常に上手に、迷うことなくやってくれたというのが、今回見ていて非常に気持ちよかった。

◇女子の棒高跳びは何とも面白くて、ドラマだと思った。「だれが勝つか」。映し方も非常に面白かったし、ルールについても、少し不明の点もあったが、説明も結構面白くて、この棒高跳びだけ、一つの短いものにして、子供たちに見せたら、物すごくファンができるんじゃないか。

織田・中井コンビに比べ、現地の雨宮塔子さんと苅部俊二さんの使い方が、うまく機能していなかったかなと思う。


 最後の女子のマラソンは、増田明美さんと鈴木博美さんの2人が、耳障りでなく、コメントが適切であったと思った。

全体としては、とてもいい企画だったし、スポーツはこんなにすばらしいのだというのが1つのドラマとしてうまく描けていたのではないか。

◇織田・中井コンビが本当に定着をしたなという印象。絶叫型の中継というものもなく、解説も随分取材をしていた。

深夜帯というのは、別の見方をすれば「ダラダラ見られる」。陸上は、「次に何が起こるのか」というのが、選手たちが待っているところも含めて、すごく面白い。スタート前の心理戦みたいなのもすごく興味津々だし、100メートルの予選のとき、フライングをとられて、スタジアムの人たちと一体になって、スタートが始まらないというのは、ずっと見てしまう。まさにライブでやってくださったこともすごくよかったし、迫力があるという印象を持った。

どうしても日本人の選手の方が、物語にしやすいのかもしれないけれど、事前取材が徹底していて、日本以外の選手の事情も良くわかる。「自民族中心主義」、「エスノセントリズム」といって、ついつい自分の国の選手だけを前面に出した報道の仕方、中継の仕方がオリンピックの研究に出てくるが、そうではないよさを出して、本当に満足する日々だった。

もう1つ、番組ホームページもよくできている。毎回のニュースがページに出されていて、すごく連動しているなという印象を持った。

◇夜中の放送というのは大変つらかったけれども、新しいルールでの事件があったりとか、新旧交代劇・兄弟対決と様々なドラマがあって、見やすくて、わかりやすく、朝方でも結構我慢して見られた。

スタートのときに、アナウンサーが、「これからじっと、黙って見ましょう」と、少し沈黙があった。ああ、やっぱり静かに聞いていた方がいいんだ、そういう感じもあって。緩急というか、沈黙の入れ方みたいなものがなく、ダラダラやられていると、本当に頭が痛くなる。そういうのも大事だなという感じもした。

苅部さんのインタビュー。現役のコーチとしての強さ、謙虚さ。コーチであるから、言えることと言えないことがきっとあるのだと思うので、それは私は聞いていて、いい印象を受けた。

◇今回は全体に、陸上競技をよく知っている方が欠落してしまったような感じがする。例えば、さっきのルールの問題でも、ピシャッと言ってくれる人がいた方が、理解がいいのではないか。そんな意味も含め、「もう少し専門家をうまく生かすことができないのか」という感じがした。


番組審議会事務局