番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2003年5月16日(金)開催 / 第457回番組審議会より
イラク報道について

議題

審議事項
 イラク報道について
報告事項
 個人情報保護法案について

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 長部日出雄 音 好宏 篠塚英子 ねじめ正一 山藤章二 横澤 彪 

局側出席者

 井上社長・佐藤専務取締役

 財津常務取締役・城所常務取締役

 児玉取締役・岡元報道局長・田代編成局長

 田澤番審事務局長/編成考査局長

 羽生報道局編集主幹

 伊藤報道局外信部長

◇TBSが事前にガイドラインをつくったことは良かったと思うし、放送局としての自分達の姿勢を示したといえる。今回の戦争については、その意味は何だったのか、一方で戦争報道の過程がどうだったのかを見る側に説明する必要があると思う。全体像を見ることによって、この戦争の意味を改めて理解できるといえる。
フリーランスについては、何故日本はフリーランスの記者だけが残ったのかということについての説明が少なくわかりづらかった。このことは今後の日本のジャーナリズムを考えていくうえでの大きな問題だろう。

◇今回のガイドラインをつくった事は大変良かったと思う。事件を報道する場合、その基本にはTBSの報道基準というものがある。今後何か大きな事件等がおきても、すぐガイドラインをつくれる体制があるわけで、その基本にそってテーマごとに少しずつ変えてつくれば良いことだと思うし、大事なところがどれだけ押さえられているかどうかが重要だと思う。フリージャーナリストについては、彼らに戦争報道のガイドラインの説明がきちんとされたうえで、本当に必要な情報をどのような形でするべきか、という様なトレーニングが少し不足していた。

◇私達が日常生きていく上においての多くの事を、イラク戦争を通じて感じさせられたような気がする。私達は茶の間にいて、戦争のテレビ映像をそのまま受け入れていたが、それは痛みの伴わない視点で戦争を見ていたといえる。人間としてこういう姿勢でテレビ映像を受け入れていいのか、報道のあり方も現状のままでいいのか、そのような疑問を感じた。

◇日本の主要なメディアが開戦直前にバクダットを引き上げ、フリーランスのジャーナリストだけが残ったことについての番組内(TBSレビュー)の説明は、誤解を招きやすいものだった。問題は報道の本質という根本的な部分にあり、日本のメディアだけが安全地帯に身をおいて報道している、ととらえられかねない。全体を通して番組の論調からは、悲惨で残酷と矛盾に満ちた戦争についての報道を検証するのに、安全な所に身を置いたメディアが自分達の行動を自画自賛するという姿勢に対して私は違和感を覚える。

◇TBSがイラク戦争報道に臨むにあたり、ガイドラインをきちんとつくり、それを正確に守りぬいたことは、評価できると思う。ただ、極めて公正中立、正確冷静だった分、特性は無かったといえる。

◇普段はさほど気にならない報道番組のキャスターのコメントが戦争報道の場合、非常に気になった。個々のキャスターのキャラクターの様なものが却ってじゃまになり、いつもと違って見えた。戦争報道というのは、戦争の持っている現場からの生々しいリアルな報道と、同時に組織ジャーナリズムが冷静にきちんと事実を分析してくれる、その両方があってそのバランスが保たれると思うが、今回はきちんと冷静に伝える部分が少なかったように思えた。

◇戦争報道のあり方は過去に比べて随分変化してきていて、今はリアルタイムに私達のなかに映像が入ってくる。視聴者は普通に生活している流れの中で多くの映像を目にするわけで、その中に衝撃的なものが突然飛び込んでくる事が見る側、つまり大人にも子供にも与える影響の重大性について、映像を流す側が充分に認識を深めてほしい。

◇本当の戦場の状況というものは放送された映像よりももっと厳しく、緊迫していて嫌なものだと思う。でもそれが見ている側には全然伝わってこない。戦争報道は、戦争そのものの分析、そして現場の情報や映像中心になってしまう傾向にある。その現場の一部だけをとって構成することは、どんなにリアルであってもつくられたものになってしまう難しさがあり、基本的に報道する側はその点を充分にわきまえてもらいたい。


番組審議会事務局