番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2003年4月21日(月)開催 / 第456回番組審議会より
テレビ番組「水戸黄門」について
18時55分〜20時54分

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 長部日出雄 音 好宏 篠塚英子 ねじめ正一 山藤章二 横澤 彪 

局側出席者

 井上社長・佐藤専務取締役

 財津常務取締役・城所常務取締役

 児玉取締役・岡元報道局長・田代編成局長

 田澤番審事務局長/編成考査局長

 木村プロデューサー

番組内容について

◇里見浩太郎を五代目の水戸光圀役に迎えた『水戸黄門』第31部もいよいよ最終回。2時間スペシャルでひとまず幕を閉じる。水戸から江戸へさらに大阪を経て西日本を回った今回の旅だが、光圀一行は博多で不正が行われていることを知り、九州へ向かう。その道中、一行は渡世人風の若者と、父親を探して旅をする娘と知り合う。やがてその二人が不正事件に関わりがあることが分かる。若者役で氷川きよし、娘役で小田茜がゲスト出演する。二人とも『水戸黄門』は初めて。劇中、氷川は民謡を歌い、自慢の喉も披露する。

◇これまでのシリーズは、脇役で長年やってきた方が水戸黄門を演じる、というイメージが強かったので、里見さんの場合、二枚目で何か彼のワンマンショーみたいな感じになってしまって、もうちょっと何か引っかかる感じの人の方がいいのかなと思いながら見ていた。時代劇というのは形、立ち居振舞いといったものが大切で、歩き方ひとつにしても農民と侍では違うわけで、そういった技術を伝承していくという意味でもこの番組の存在はとても大切だ。

◇今回は2時間のスペシャルということで、たいへんにぎやかで大掛かりな作品に仕上がっていると思う。ただ、元来時代劇がもっているハラハラドキドキの部分、どこか頼りないところがある二枚目が最後には勝つ、というような時代劇のどんでん返しの快感とでもいえるものが非常に乏しくなっている気がする。
長寿番組というものは、あまりいろいろと変えずに、素直に堂々とつくっていただきたいと思う。

◇現代社会の中では、本来主役であるはずの人間が時代から取り残され、文明が先に進んでしまう現象が生じている。大きな情報社会の波にうまくのれる勝ち組と対応できずにいる負け組という2極化が進んでいる。そういう社会に対応できずにいるお年寄り達の道徳観、美学がだんだんと通用しなくなるのではという不安感をつかの間救ってくれるのがこの勧善懲悪ドラマ「水戸黄門」だろう。往々にしてスペシャル番組とか気張ったものは、通常と比べると力が入りすぎてよくないことが多いが、今回もそのケース。ファンとしては普段着の番組を論議してもらいたかった。

◇ある種パターン化された番組であり、完成されたひとつの形式が成立していて、安心して見られる時代劇だと思う。黄門様が悪を退治するのを見ることによって不満を解消する、というパターンを今後維持してゆくのは、官僚に対する価値観、見方が変化し、お上に対して疑義みたいなものが出てきているのでなかなか難しくなってきているのではないか。

◇今回のゲストである氷川きよしの魅力を、番組の中で充分に生かしきれていなかったと思う。最初の登場の部分でガッと客をつかまえることに失敗してしまった。多分、彼のファンの期待が大きかっただろうだけにそれを裏切った感が強い。

◇番組の持っているテーマが、日本人が昔から求めているものにマッチしていて、物語の最後には正しい人が必ず勝つというところにもってゆく、こういうドラマはみんな好きなんだろうなと思う。長寿ドラマとして全国各地で展開してきているので、それが視聴率の安定につながっているのだろうし、是非とも国民的ドラマに発展させてもらいたい。

◇最近安心して教育的見地から見られる番組が少なくなってきたが、「水戸黄門」は勧善懲悪という古典的な手法の時代劇ではあるが、人間の根源的な生き方のようなものをドラマを通して教えられているような気がする。私達と孫の世代とが一緒に番組を見ながらいろいろなことを語り合い、大切なものは何かということを彼らに自然な形で教えることができる貴重な番組ではないだろうか。

◇物語も登場人物の構成もわかりやすく、安心感をもって見ていられる番組。ただ今回はいろいろな登場人物が出てきて人物の積み重ねの良さみたいなものが少し薄れて、フラットな感じになっていたようだが、逆にCGを駆使した映像の面白さ等では若い層をとりこめるのではないかと思う。この2つの矛盾した側面を巧く合わせて、年代を超えて家族みんなで楽しめる形にしてゆくことがこの番組の今後の課題かもしれない。

◇「水戸黄門」は意外な方が見ていて、科学者や学者にも好きな人が多い。それは見ていて安心感があるからだろうし、日常の煩わしいところから逃れられる・・そんなところが魅力なんだろうと思う。


番組審議会事務局