番組審議会議事録

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番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2003年1月20日(月)開催 / 第453回番組審議会より
テレビ番組「高校教師」について
22時00分〜22時59分

議題

審議事項
 テレビ番組「高校教師」第1話
1月10日(金)22時00分〜22時59分放送

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 長部日出雄 音好宏 篠塚英子 ねじめ正一 山藤章二 横澤 彪 (服部委員欠席) 

局側出席者

 井上社長・佐藤専務取締役

 財津常務取締役・城所常務取締役

 児玉取締役・平本報道局長・田代編成局長

 田澤番審事務局長/編成考査局長

 鴨下TBSエンタテインメント相談役

 伊藤プロデューサー

番組内容について

◇93年1月、野島伸司がTBSの連続ドラマで初めて脚本を手がけ、究極の恋愛の形を描いて巷の話題を呼んだ『高校教師』。あれから10年…。2003年1月、再び伊藤一尋プロデュース、野島伸司脚本というコンビにより、教師と生徒の新たな究極の恋愛を描く、新たな『高校教師』が幕を開ける。主演の高校教師には俳優、アーティストとして活躍中の藤木直人。ヒロインの女子高校生役には「3年B組金八先生」出演以来、そのずば抜けた演技力で注目を浴びている上戸彩が演じる。

◇主人公以外の脇役の人達、彼らの健康的な部分があまり目立たつことがなく、それらと対照的な精神的な危うさ、人間の弱さの部分を全面的に出しているドラマだと思う。映像的には公園の場面など幻想的な部分もあり、またメッセージの入れ方も非常にバランスがよく、ちょっとバランスがよすぎたんじゃないか、もっと大胆にやれなかったのかな、という感じがした。

◇脚本の野島さんの世界はどこか暗い感じをうけるのだが、今回は特に重たいのではないだろうか。前作放送からのこの10年間のタイムラグの中で、野島ワールドがどこまで通用するかどうかが問題だと思う。今の時代、人間の持っている本質を真面目に追求することは見向きもされない風潮があり、だからこそ野島さんの考えられたコンセプトのとおりに今後ストーリーを展開させていくのがよいのかどうか、そこが勝負どころだろう。

◇このドラマは、最初からおじさん、おばさんの感情移入を拒絶する作る側のスタンスを感じた。つまり一般的に温かい、いいドラマにあると考える、体温・日常感・現実感・わかりやすさ、そういうもの全てをそいでいく方向のものだといえる。小説でいえば芥川賞的な作り方、純ドラマを目指していると思う。

◇今回の演出に関しては非常に洗練されていると思った。細部にわたって実に緻密に計算されていて、本当の意味でのプロフェッショナルな演出。そういう演出には最近の日本映画ではめったにお目にかからないので気持よく見ることができた。上戸彩の演じる雛の普通過ぎる自分からの変身願望、そういう気持が同世代の視聴者にどこまで伝わり共感を得られるか、同時に潜在的な彼女のファンもとりこみつつ、彼女をこの作品でどれだけブレイクさせられるかがこの作品の眼目であり、成否の分かれ目だと思う。

◇初回に関しては、音楽、舞台、役柄等かなり前回の話で視聴者を引っ張ろうしたのではないか。この10年、教育界では多くの問題が様々な形で出されてきたわけで、前のドラマで提示されたようなショッキングなことに対する、見る側の受け止め方も大きく変わってきていて、やはり過去の遺産の部分での引っ張りは無理があったと思う。

◇連続ドラマというのは、必ず次回を見たくなる何かがないとだめだと思うが、残念ながらこの作品は次回も見たいと思わなかった。やはり、どこかに次回へのひっぱりの要素が必要だ。恋愛というものは普遍的なテーマであり、どんなに状況、設定、時代が変わろうと、ひとつの大きなドラマになり得ると思う。それだけに、この10年の大きな時代の変化の中では、愛にも様々な姿があり、そういう時代に「高校教師」の新しい形のドラマを作ることはかなり難しいと思った。映像的には非常に清潔感があって、見た後で嫌な感じは残らなかった。

◇教育現場における先生や生徒達の倫理観、価値観というものが、この10年で大きく変わってきているわけで、このドラマの中の先生や生徒達の今後の成長の部分をメリハリをつけてほりさげてもらいたいし、清潔感のある映像の中で、何らかの今日的なメッセージを発信してほしい。

◇自分自身この10年間にいろいろな生活の変化があった為、このドラマを見て結構こんなことってあるんだろうな、と思いながら素直に見ることができたし、今後の展開にもたいへん興味をもてた。教師役の藤木さんは何かちょっとフワッとした感じが、これからどんどん変化していく部分を秘めているようで、はまり役だと思う。また、生徒役の上戸彩さんもこれから何か起こりそうだという雰囲気があり楽しみだ。

◇この10年の間に、教育の場、家庭、すべてのことが大きく変わってきていることを、テレビ局側がもっと理解していかなければならない。つまり、従来の価値観、パターンでの様々な判断が難しい時代になっていることを頭においてほしいと思う。


番組審議会事務局