番組審議会議事録

このページはTBSの番組や放送のありかたを考えるページです。
番組審議会の審議内容を中心に紹介し、皆様からの意見も募集しています。


2002年5月20日(月)開催 / 第447回番組審議会より
テレビ番組『サバイバー』
18時55分〜19時54分

出席者(敬称略)

委員長生田正輝 
副委員長沼田早苗 
委員池田守男 長部日出雄 音好宏 篠塚英子 服部克久 山藤章二 横澤 彪 (ねじめ委員欠席) 

局側出席者

 砂原社長・佐藤専務取締役・若林常務取締役

 伊藤常務取締役・財津常務取締役

 近藤編成局長・平本報道局長

 田澤番審事務局長・編成考査局長

 山泉TBSエンタテインメント社長

 安田プロデューサー

番組内容について

◇この番組はアメリカ・オリジナル版を日本人向けにアレンジして製作された。年齢も職業も性別も全く違う16人が、人里離れた地を舞台に40日間に及ぶサバイバルゲームを行う。日本版ではより人間に密着し、16人のサバイバーの生き方に焦点をあてる。サバイバルを通し社会性・人間性を問う人間ドラマであり、極限状態の人間が生み出す迫真の感動物語を追っていく。ドキュメンタリーとゲームという全く異なった二つの要素をドッキングさせた、新しいかたちのバラエティ番組。

◇アメリカのオリジナル版は生々しい感じの番組だと思ったが、それを日本的にアレンジしたところが非常に面白かったのと、逆に、どうしてもつくりものっぽくなってしまうところが難しいと思う。また、メディカル・ケアについては(説明を聞いて)かなり確保されているように感じた。

◇もっとスリリングかと思ったが余り緊張感が伝わらなかった。また16人の選び方、つまりサバイバルで生き残るということを単純に考えれば、男女差、年齢差、職業等、様々な格差がある中でどの様にえらんだのかと思った。今後面白いと思うのは、団体戦の時には、自分達にとって有益な人が、個人戦になった途端に、今度はその人が敵になる訳で、追放していくようにと変わる。自分は能力がないことを示しながら勝ち残っていくことになる。(ゲームの)あとのプロセスは、人間の心の駆け引きだけの部分に注目が行くような感じで、面白いなと思ってみている。

◇視聴者の立場に立つと、どう楽しんだらいいのかということが明確に伝わってきていないのではないか。つまり、どう入り込んでいけば、どう楽しんでいったらいいのかというのがわかりにくい。今後個人戦になると、人間の業というか、ドロドロしたもの、嫌らしさやずるさとか、様々なものが出てくると思うのでそれを期待してみたい。

◇私は、つくられた艱難辛苦の状況を見せられた時に、違和感、抵抗感を感じて、さめた目で見てしまうのだが、まず、長期間日本を離れていられる人を集めて、擬似生存競争をやるという、この番組の骨子自体に反発心を持ってしまった。私達の記憶の中に、戦争中、戦後というのは本当にサバイバルだった訳で、心情的に「サバイバル」というある種、もっともらしいネーミングで「危機感」とか辛さを味わう、ゲーム性についていけない。

◇某新聞に「サバイバー」が「悪趣味ではあるが、圧倒的に面白い」という書き出しのコラムがあった。悪趣味と感じるものは、初めに出てくる時は人の肌を逆なでするもので、それは何か実は可能性を含んでいると思うし、その可能性をうまく伸ばす方向にいってほしい。演出家が出演者を動かすのではなく、出演者が皆共同制作のドラマに参加しているんだという気持ちを持ち、自主性、自発性を、みずから意識するようにすると、この番組はドキュメンタリーとドラマの結合という、新しいスタイルを生み出す可能性があるだろう。また、こういう番組は、事故などのあらゆるリスクを計算して制作にとりくんでもらいたいし、事故などで、この番組の可能性を潰さないようにしてほしい。

◇私が非常に面白さを感じたのは、各自の歩んできた道の原体験が違うということ。自然の中での知恵は皆が持っていて当然であろうと思っていたが、むしろそれをもたない最近の若者たちの生き方、現況をよく観察できた。私は自然から学ぶということが教育の原点にあると思うので、自然と共生しつつ、自然の中にひとりひとりがどういう形で入り込んでいっているのか、本当に創意工夫して、自然と共に過ごせるか、そういう観点からの番組作りがみる人の心を打つようなものにつながればと思う。

◇アメリカでヒットしたヨーロッパ発の番組と同じフォーマットが日本でウケるのか、興味津々だった。アメリカ人と違って日本人は、自分の思いというものをうまく発言しにくいところがあり、その部分がナレーションに負っているようで、そこが今後どう変わるのか興味深い。あとはメディア・リテラシーの問題。出演者の方々は、皆カメラの前で話している、ということを視聴者の側は十分わかって見ている。そのあたりの、送り手側と利用者側のお互いの認識のズレがまだギクシャクしているような印象をうけた。

◇オーディションの時に、プロデューサーの方が状況をきっちり頭の中に描いてつくられているのでしょうが、結果的には現場に行ってみたら全然違ったものになってしまい、そのあたふたした感じが見えてきた方が面白いのではないか。製作者にも想像できなかったような小さな事件を通じて、こちらに人間的な部分が伝わってきて、ドロドロした中にもホッとするというのもあり、全体的にはバランスよくとらえられていると思う。

◇私のように過酷な戦争経験を持つ者には、まだ甘い。が、1つのゲームとして見れば、それなりにいいのかなと思う。戦争中はもっと厳しい争いが現実にはあり得る訳で、つまり、カメラが既に存在しているということが、フィクションであり、それは番組の宿命で、面白くしようと思えば、その点で苦労されていると思う。


番組審議会事務局